東芝の上場廃止リスクがくすぶっていますね。
その昔、持っていた株式が上場廃止になって、文字通り紙くずとなった経験があります(泣)。
100%減資が決定されれば、紙くずとなるわけですが、上場廃止が決定されると株価はあっという間に下がります。決定された当日は、膨大な売り注文で売買が成立せず、ストッパー(値幅制限)が外れる翌日に売れることになりますね。
記憶に新しいスカイマーク株は、上場廃止が決まり値幅制限が外れて、株価は88%も下落しました。文字通り、紙くずです。
さて、そんな東芝株ですが、どんな場合に上場廃止になるのか?まとめておこうと思います。
粉飾決算をしていた東芝はどん底に
2015年夏に東芝が粉飾決算していることが報じられました。そのあと、株価は下落の一途をたどっていたわけですが、その後も持ち直していたんですね。
ここにきて、米原子力子会社ウエスチングハウスの業績悪化、破産法申請などにより株価はどんどん下がって、200円前後で取引されるようになっています。
上場廃止はどんなときになるの?
来期末に債務超過なら上場廃止
2度も延期していた決算発表(2016年4月~12月期)。結局、監査のお墨付きなしでの発表となっていて、まだ不完全な決算と言えますが、その決算を見ると、
自己資本は▲2256億円のマイナスと初めての債務超過となっています。
資料:東芝決算資料より作成
上場を維持するには、この債務超過を1年以内に解消する必要があるんです。
つまり、来期2018年3月期末に債務超過の状態であれば、上場廃止になっちゃいます。
そうならないためにも、東芝は資産を売って債務超過を解消しようとしています。
その本丸がメモリー事業。2兆円の売却益をめざしているわけですね。シャープを救った鴻海(ホンハイ)も興味を示している模様。
ここで、恐いのが売却相手がすんなり決まるのか?決まったとしても、2018年3月期末までに各国の独禁法審査が終わるかどうか、というところです。
【追記 2017.8.27】
東芝が8月中に半導体メモリー事業の売却に向けて、米ウエスタンデジタル(WD)と優先的に協議することを決めました。これで、経営再建を占う最大のヤマ場が訪れることになります。
決裂すれば、上場維持のためのメモリー事業売却(2018年3月末までに完了が必要)に、暗雲が立ち込めることになる。
9月28日に米投資ファンドのベインキャピタルを軸とする「日米韓連合」と最終契約を締結。売却額は2兆円。東芝とHOYAで過半数の株を握ることになります。
米ウエスタンデジタルの売却指し止め訴訟、独禁法審査がなお課題として残ります。
【追記 2017.12.5】6,000億円もの増資が決まましたね。これで、メモリー事業が2018年3月末に売却できなくても、上場廃止は避けられることがほぼ決定的です。
決算資料が提出できないとき
今回(2017年3月期第3四半期)の決算も2回も延長していますが、有価証券報告書の期限である6月末までに17年3月期本決算を提出できず、かつ、金融庁から期限の延長申請が認めてもらえない場合。
この場合は、1か月以内に決算資料を提出できないと上場廃止となるわけです。
さきほどの2期連続の債務超過の場合と違って、金融庁の判断(期限延長)も関わってきますね。
【追記】
2017年3月期の有価証券報告書(有報)について「限定付き適正」の意見を監査法人から受領したと発表しています。
債務超過額は5529億円で確定。
債務超過を解消できないと上場廃止になるので、それいが一番難関ですね。
参考 東芝「限定適正」意見の有報提出 債務超過5529億円 17年3月期末(日本経済新聞)
内部管理体制に改善の見込みがあるか
東芝は、東証(東京証券取引所)から内部管理体制に問題のある『特注銘柄』に指定されています。
特注銘柄とは?有価証券報告書等の虚偽記載や監査報告書等の不適正意見、上場契約違反等の上場廃止基準に抵触するおそれがあったものの上場廃止に至らなかった銘柄のうち、内部管理体制等を改善する必要性が高いと取引所が判断し、継続的に投資家に注意喚起するために指定する銘柄のこと。引用:野村証券
東証が「改善していない」「改善の見込みがない」と判断した場合も上場廃止となる。
東証の判断次第で、上場廃止となるわけですが、東芝は東証に再発防止策などの書類を提出済み。
巨額損失となった原因の米原子力子会社ウエスチングハウスの破産法申請し、連結対象から外していることなどがどう評価されるかがポイントとなりますね。
監査意見によっても上場廃止に
投資家保護のために、公認会計士が企業の財務諸表を検査しているわけです。この決算書は、正しいですよというお墨付きをくれるわけですね。
このお墨付きはは、4種類あって、
「無限定適正」 「限定付き適正」 「不適正」 「不表明」 |
この4つのうち財務諸表が正しく表示されていない「不適正」、必要な証拠を入手できないなど適正かどうかの判断ができない「不表明」の場合は、東証の上場廃止基準に抵触するわけです。
抵触することで、直ちに上場廃止になるわけではありません。東証が「市場の秩序を維持できない」などとして判断した場合は、上場廃止になってしまう可能性があるわけです。
ちなみに、東芝は「不表明」が該当している。
監査が意見表明を見送った企業は?
東芝は監査の意見表明が見送られている状態ですが、過去に、こんな企業がなっています。
◎スカイマーク(2015年)
◎カネボウ(2005年)
◎ライブドア(2006年)
まとめ
まとめておくと、
●2018年3月期末に債務超過が解消されない場合
●決算資料が期限までに提出できない場合
●内部の管理体制が東証がダメと判断した場合
●監査の意見がもらえず東証がダメと判断した場合
このような場合に、東芝は上場廃止となってしまう可能性があるわけです。
時間軸で言えば、2つ目の2017年本決算資料が期限通りに提出できるか同課が一つの焦点ではないでしょうか。
上場廃止に対しては、楽観論もあって、株価は横ばいで推移しています。けれども、やっぱり投資しづらい状況でありますよね。
損失を確定したくない・・・上場なんてするわけない・・・なんて思いがあって、私も痛い経験をしてしまったことがあります。
8月には東証二部に降格が決まりました。監査法人との確執はいまだ埋まらず、上場維持に向けた正念場を迎えていますね。
東芝のキャッシュは実は豊富
東芝が上場廃止になるかどうか、予断が許しませんが、これから投資をしていくには、キャッシュの動きを見るのが大事だということを少しお話させてもらいます。
私は投資をする際には、まず見るのがキャッシュの動きです。
売上や利益、資産の状況などは新聞報道されますが、キャッシュの動きってあまり報道されないんですよね。
売上や利益は、粉飾されても見破るのは困難ですが、そうした粉飾をしていてもキャッシュの動きはなかなか粉飾できないんですね。
スカイマークは、粉飾したわけではないんですが、キャッシュの動きを見ていると危ないことがよくわかります。この事例を見て、キャッシュフロー計算書を見るのが大事だなと思ったんです。
キャッシュフロー計算書は、会社のキャッシュの増減を一会計期間で示したものであり、キャッシュとは現金及び現金同等物のことです。
引用 決算書.com
Pickup! スカイマークが民事再生で破産!上場廃止で保有株はどうなるの?
わずか18億円の赤字で倒産
スカイマークは、売上850億円もあり、それまで数十億円の黒字企業だったんですが、たった18億円の赤字を出して、倒産してしまったんです。
たった一期の赤字、それもたったの18億円です。自己資本比率も50%を超えていたんです。
それが、倒産したわけです。
そこで見るのがキャッシュフロー計算書です。日本では2000年に導入されたみたいですね。
キャッシュフロー計算書を見れば、その会社がどのくらいお金を増やすことができているのか(減らしているのか)が分かるので、『資金繰りが苦しくなっている、経営が行き詰っている』ことが分かるのです。
スカイマークのキャッシュフロー
青グラフの「営業活動によるキャッシュフロー」は、本業で稼ぎだしたお金です。スカイマークは航空会社ですので、JALやANAのようにお客さんに飛行機に乗ってもらうことでお金を稼ぐわけです。
それが、どんどん減っているのが分かります。
一方、「投資活動によるキャッシュフロー」は、代表的なのが航空機の購入です。エアバス(仏)社の航空機を購入していたわけですが、稼ぐキャッシュの数十倍の設備投資を行っているのが分かります。
これだけ大規模な投資をしているのは、あまりにもずさんな経営だったのが今思うと分かりますね。飛行機すら飛んでいない状態ですので、誰も乗ることがなかったんです。
身の丈に合わない飛行機を買ったばかりに、倒産してしまったんですね。
東芝のキャッシュは8000億円以上
昨年、東芝メディカルシステムズという優良資産をキヤノンに、6400億円あまりで売却しています。
そのため、現状キャッシュは豊富にある状態ですので、スカイマークのように、資金繰りに窮して倒産というのはないのかもしれません。
いずれにせよ、東芝の今後は注目しておきたいですね。
財務諸表をどんなふうに読んだらいいの?って思ったときに、実際の事例を踏まえながら、解説しているこの本がおすすめです。
頭に入りやすい構成になっていますし、サクッと読めますよ。
ではでは。
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